更年期障害の心強い治療法〜女性ホルモン補充療法

新垣です。今日は更年期障害と、そのの治療法である女性ホルモン補充療法についてです。

前々回の記事でも書きましたが、更年期障害は卵巣機能が低下して卵巣から作られるエストロゲンの分泌量が低下することが原因で起こります。エストロゲンは自律神経を調節し、発汗、体温、心拍、血圧などに作用しているので、エストロゲン量の低下によって異常な汗、ほてり、手足の冷え、動悸、血圧上昇などが起こり、また感情面にも作用してイライラ・落ち込み・不安など、精神が不安定になることもあります。

不思議なことに症状の現れ方には個人差が大きく、ほとんど症状を感じない人もいれば、症状が重く、日常生活に大きく影響が出る人もいます。治療が必要となるのは約2割と言われていますが、とにかく、自分がしんどいと感じたら治療をするタイミングです。周りと比べて、このくらいじゃ治療するほどじゃないわ、などと考えなくても大丈夫です。

女性ホルモン補充療法は、体に不足しているエストロゲンを薬で補うことで症状を改善させます。女性ホルモンが使えない方(乳がんや子宮がんの既往、肝機能障害、重症の糖尿病など)でなければ、気軽に使って頂いて良いお薬です。即効性があるため、今すぐ症状を改善してほしいという場合にも適しています。効果は、更年期障害の症状改善だけでなく、骨を強くする、悪玉コレステロール値を低下させる、血圧を下げる、肌のハリを保つなど嬉しい作用がたくさんあります。

使うお薬は、子宮がある方はエストロゲンと黄体ホルモンの2種類のホルモン薬、子宮を手術で摘出した方はエストロゲン製剤のみです。これは、子宮がある方にエストロゲン製剤だけを使うと子宮体がんのリスクが上がるため、それを打ち消すために黄体ホルモンが必要となります。子宮がない方は子宮体がんの心配がないので、黄体ホルモンは不要なのです。

日本ではホルモン剤に悪いイメージを持っている方が多いのですが、海外を見ると、オーストラリアでは閉経後女性の約60%、アメリカでは約40%の女性が女性ホルモン補充療法を受けています(こちら参照)。なのに日本では約2%の女性しか使用していません。ということは、更年期症状が適切に治療されずにつらい思いをしている女性が多くいるのかもしれません。

女性ホルモン補充療法は怖い治療ではありません。適切に使用すれば、更年期を上手に乗り切る心強い相棒になってくれます。もちろん、女性ホルモン以外を希望される方には漢方など他の治療法もありますから、気軽に婦人科に相談にいらして下さいね。

女性ホルモン補充療法についてもっと詳しく知りたい方はこちら(HRTとは 更年期症状を改善するホルモン補充療法) NHKがうまくまとめています