CLIP函館11-12月号〜女のカラダノートより
新垣です。
みなさん、「子宮脱」をご存知ですか?膣を通って子宮が下がり、ひどくなると子宮全体が膣から外に飛び出てしまう疾患です。年配の女性の有病率は比較的高いにも関わらず、恥ずかしさから受診しない方が多く、先日お会いした女性は10年経ってようやく相談に来れたということでした。その方、股に挟まる感じが不快&不安だったのに相談できずにいらして。治療をしたところ「これで温泉に行ける」と大変喜ばれました。このような女性を減らすためにも、骨盤臓器脱について広く知ってもらいたく今月発行のCLIPに記事を書きました。子宮脱かしら?と思ったら、気軽に婦人科を受診して下さいね。 CLIP函館はこちら
Q.時々70代の母が「股に何か挟まる感じがする」と言うので子宮脱かと思うのですが、なかなか婦人科に行こうとしません。放っておいても大丈夫でしょうか?(40代女性)
A.仰る通り、お母様の症状は子宮脱によるものと思います(ちなみにこれは「骨盤臓器脱」とも言い、子宮のほか膀胱などが膣から出る症状も指します。ここではこの名称で説明しますね)。放っておいて良いかは違和感の強さと他の症状の有無によります。まず「骨盤臓器脱」ですが、原因は子宮などの骨盤内臓器を正常な位置に保つ役割の「骨盤底筋」という筋肉のゆるみです。筋肉がゆるむ最大の原因は出産+加齢・肥満で、出産経験がある女性なら誰にでも起こりえます。症状は、初期では入浴や重いものを持った時に何か膣の中に下がるような感じ(下垂感)が出て、悪化すると子宮や膀胱の一部や全体が膣から出て戻らなくなります。こうなると、脱出部が常に股に挟まることで歩きにくく、尿が出にくい等の排尿障害が起こることもあります。症状が軽く気にならなければ様子を見て良いですが、下垂感が気になる場合やぽっこり出て戻らない場合は産婦人科に相談しましょう。治療には手術と手術以外があり、ここでは後者を3つ紹介します。①骨盤底筋体操:骨盤底筋を鍛える体操。方法:肛門と膣をゆっくり閉め5秒キープしてから緩める、を繰り返す。初期なら2〜3ヶ月続けると効果を実感できます。ぽっこり出ている時は膣内に戻してから行なって下さい。②輪状の器具(ペッサリー)を膣に挿入する:合う方にはとても有用ですが、入れっぱなしにすると膣が痛むため数ヶ月毎の受診が必要です。私は、できる方にはご自身でペッサリーを出し入れする自己着脱をお勧めします(自己着脱をしていない病院もあります)。③サポート下着を装着する:フェミクッション®などが販売されています(保険適応外)。最後に、強い腹圧をかけると悪化しやすいため、便秘をしない、重いものを持たない、太りすぎないことを心がけましょう。骨盤臓器脱は恥ずかしいことではありません。お母様にも是非産婦人科を受診して頂き、治療が必要か、どの治療が合うかを一緒に相談しましょう。
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